ぼんじーあ!サンパウロ大好き、ぴょんぴょ子です。
先日、ディズニー好きのお友達からこんな質問がきました。
「ホセ・キャリオカ」、「ジョゼ・カリオカ」、「ゼ・カリオカ」、どれが本当の名前?
日本では一般的に “ホセ・キャリオカ” と呼ばれるこのキャラ(☟)は、 “ジョゼ・カリオカ” とも “ゼ・カリオカ” とも呼ばれることが場合によっちゃあります。
結論から言えば「どれも正しい呼び名だよ!」って話なのですが、少し詳しくご紹介したいと思います。
ホセ・キャリオカとは
今回の話の中心となるのは、緑色のオウムをモチーフにしたディズニーのキャラクター。
現在の日本では “ホセ・キャリオカ” という名で呼ばれています。(それに倣い、本記事でも基本的には “ホセ・キャリオカ”で統一しております。)
1942年に公開された映画『ラテン・アメリカの旅(原題:Saludos Amigos)』で初登場。
続く『三人の騎士』でドナルド・ダックやパンチートと一緒に登場したことで、一般的には “三人(羽)のうちの緑色のやつ” といった印象をもたれているのではないでしょうか。
東京ディズニーランドのパレードやキャラクターグリーディングでも見かけることが多く、日本での知名度は「出演作品のストーリーは知らないけど、キャラは知ってる」程度はありそうなキャラクターです。
ブラジルのリオ出身
このホセ・キャリオカ、なんとブラジルのリオ・デ・ジャネイロ出身という設定。
上述のデビュー作『ラテン・アメリカの旅』で、ブラジルの名曲『ブラジルの水彩画』が流れる中、自然豊かなリオが描かれた水彩画から誕生します。
デビュー作『ラテン・アメリカの旅』☟
同作には、ホセ・キャリオカがドナルド・ダックにサンバを教えながらリオ観光に連れ出し、ブラジルの蒸留酒カシャーサで酔い潰すといったブラジル感満載のシーンがあり、ブラジル好きには嬉しい作品。
そして、実際にウォルトがホセ・カリオカを生み出したのは、1941年のブラジル滞在中、それもリオで最も格式のあるホテル、コパカバーナ・パレスの中で着想を得たというのだから、正真正銘のリオっ子ですね。
ちなみに、ホセ・キャリオカのチャームポイント、カンカン帽+スーツ+傘という出立ちは、当時のリオで貧しい人々の味方となった弁護士、Dr. Jacarandáがモデルになったとも言われています。(※諸説あり)
さて、ブラジルには “リオ出身”、“リオっ子” という意味を表す言葉があります。ポルトガル語でカリオカ(Carioca)というのです。
次の項目にも登場するので頭の片隅にいれておいてくださいませ。
“ジョゼ・カリオカ”との呼び名
この “ホセ・キャリオカ”、ブラジルでは “ジョゼ・カリオカ” や “ゼ・カリオカ”とも呼ばれています。
“ホセ・キャリオカ” のスペルはJosé Carioca。
ブラジルの公用語のポルトガル語では、Jがスペイン語のようにハ行で発音されることはなく、日本語のジャ行のような音になります。そして母音に挟まれたsは濁って発音されザ行のような音になるので、Joséはホセではなくジョゼになります。
デビュー作『ラテン・アメリカの旅』のオリジナル言語Ver.では、ホセ・キャリオカ自身でも「ジョゼ・カリオカ」と名乗っており、上述の通り、“カリオカ” はポルトガル語で “リオっ子” を意味する単語でもあります。音もカタカナ通りの音でカリオカ(厳密にはカリオ-カ)と聞こえます。
“ゼ・カリオカ”との呼び名も
では“ゼ・カリオカ” との呼び名はなんなのか。
これは “ジョゼ・カリオカ” の愛称です。
ブラジルでは、一般的なニックネームの付け方として名前を短縮する方法が多く、José(ジョゼ)くんをZé(ゼ)くんと略して呼ぶことが多いのです。
(他にも例えば、ジュリアナをジュにしたり、フェルナンドをナンドにしたり、マリア・ルイーザをマルにしたり…)
ちなみにホセ・キャリオカもといジョゼ・カリオカは、出身地ブラジルでは超がつく人気者。 “ゼ・カリオカ” の名前で作品が展開されるほど、リオのみならずブラジル全土でポピュラーなキャラクターなのです。
今年2022年の8月24日に、ホセ・キャリオカはデビュー80周年を迎えました。それを記念して作られた日本のディズニー公式グッズに “Zé Carioca” と書かれていたそう。ぴょんぴょ子に質問してくれたお友達はそれで疑問に思ったようでした。
たしかに、ホセで通っていたら「なんで ゼ?」ってなりますよね。
“ホセ・キャリオカ”との呼び名は?
ここまでの内容をざっとまとめるとこんな感じです☟
そして、ここまでを一通りお友達に話したところ、このように返されました。
となると、José Cariocaがホセ・キャリオカって呼ばれるの、おかしくない?
うーむ、どうして日本じゃ “ホセ・キャリオカ” 呼びなのか。ここからはぴょんぴょ子の憶測ではありますが、事実も含めて仮説を紹介して参ります。
ーーー
このジョゼ(José) という名前、ちょろっと上述した通りスペイン語読みだと文頭のJがハ行のような音になるので、“ホセ” になります。
『三人の騎士』でホセ・キャリオカ、ドナルド・ダックと共に登場したもう一人(羽)の鳥キャラに、パンチート(Panchito)という赤い鳥がいます(この子☟)。
このパンチート、設定ではメキシコ出身、つまりスペイン語圏のキャラなのです。ポルトガル語話者のJosé Cariocaは自らを「ジョゼ」と名乗っていても、スペイン語話者のパンチートはJoséを「ホセ」と呼んでいるのです。
あくまでぴょんぴょ子の推測ですが、ポルトガル語圏のリオ出身のキャラクターであるにもかかわらず日本での呼び名が “ホセ” で通っているのは、パンチートの影響なのではないでしょうか?
ちなみに、デビュー作『ラテン・アメリカの旅』でホセ・キャリオカが登場する『ブラジルの水彩画』編の冒頭クレジットでは、“Joe Carioca”と表示されています。そして英語圏出身のドナルドは「ジョゼ」と呼んでいるように聞こえます。ただ、なんせあのしゃがれた声なんで、聞こえようによっては「ホセ」にも聞こえなくもない…。
で、一方の “キャリオカ” の方ですが…
スペイン語でもcariocaは “カリオカ” と発音される綴り。
ただ、英語圏ではキャリオカやケリオカ(大袈裟に書くならキャゥリオゥカとかキェリオゥカとか、動詞carryのcaの部分と似た音)と発せられやすいスペルなのです。ジーニアス英和大辞典でcariocaをひいてみても発音記号はkæ`ɚrióʊkəとなっており、英語圏ではその音が一般的なようです。
実際にぴょんぴょ子も、英語圏の人々がホセ・キャリオカを「ジョゼ・キャリオカ」とか「ホセ・ケリオカ」とかっていろいろ混ざった形で呼んでるのを何度も耳にしたことがあります。
というわけで日本の “ホセ・キャリオカ” という表記、“ホセ”はパンチートの呼ぶ音から、“キャリオカ”は英語圏の音を真似た、若しくはスペルから判断して日本人がつけた呼称なのではないでしょうか?※ぴょんぴょ子の憶測です
————
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
ここまでの内容で事実だけをまとめるとこんな感じになります☟
要はホセもジョゼも、キャリオカもカリオカも、地域によって呼び名が違うだけですよーって話です。
以上、ブラジル生まれのスターの呼び名の話でした〜。
〜以下はただのボヤキ〜
遠い日本から見たラテン・アメリカってイメージがごっちゃになっていることが多いですよね。
映画『三人の騎士』の終盤、メキシコ出身のパンチートがソンブレロをドナルド・ダックとホセ・キャリオカに半ば強引に被せて歌って踊ってってシーンがあります。3人(羽)がソンブレロを被っている姿がそれはそれは可愛くって…で、そんなソンブレロ姿のホセ・キャリオカがキャラグッズ化されちゃったりするわけですよ。
そうなると、映画を見てない人からしたら、「ホセ・キャリオカって名前からしてスペイン語系だしソンブレロをかぶっているからメキシコのキャラかな」とか「ホセ・キャリオカってリオ出身らしい。ってことはソンブレロもブラジルの文化なのか!」とかって変な印象というか妄想というか、イメージがついちゃう可能性があるんじゃないかと。
実際にぴょんぴょ子も、ホセ・キャリオカがソンブレロを被ってマラカスを振ったりしているイメージが強く、10数年前にブラジルという国の文化に興味を持つまでは、まさかあのホセがカリオカ(リオ出身者)という設定だとは気づきもしなかったし、ソンブレロもマラカスも南米では一般的だと思ってたわけです。
だからなんだい?って話ですが、まぁつまるところ、知るって大事だなーと改めて実感した次第です。文化の盗用なんて言葉がある時代だからこそ、何事も正しく知った上で敬意を持って楽しみましょ。
で、最後に。
この記事のサムネとして貼ってある『三人の騎士』ですが、あれウォルトのサイン入りのセル画です。
コチラのサンパウロの展示場☟で一般公開されているので、是非お立ち寄りあれ。
ではでは、Tchauちゃお!
ーーーー
ブラジルのディズニーランドについて☟
ブラジルの国民的キャラ、モニカについて☟
参考:https://www.historiadealagoas.com.br/dr-jacaranda-o-alagoano-que-inspirou-o-ze-carioca.html、https://g1.globo.com/pop-arte/noticia/2022/08/24/os-80-anos-do-ze-carioca-o-mais-brasileiro-dos-personagens-da-disney.ghtml
コメント