【文】サンパウロのサンバカーニバルの強豪Vai-Vaiを知る!②参加者インタビュー編

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ぼんじーあ!サンパウロ在住のぴょんぴょ子です。

本来ならカーニバル真っ盛りの今ですが、2021年は例のアレによる影響で前代未聞の中止となってしまいました。

そんなサンバカーニバルに例年出場しているエスコーラ・ジ・サンバの強豪『Vai-Vai』について、2記事に分けてご紹介しております。今回はその2記事目として、2017年のカーニバルにVai-Vaiのバテリア(Bateria / 楽器隊)で出場した日本人Bさんのインタビューをご紹介します!

(ちなみに1記事目はこちらです)

1.Bさんについて

現在ブラジルで働いているアラサー男性。

18歳からサンバミュージックに興味を持ち、浅草サンバカーニバルに出場。2016年に仕事の都合で渡伯。2017年2月のパレードにVai-Vaiのバテリア(bateria / 楽器隊)メンバーとして参加。

2.インタビュー本編

Bさんとのインタビュー本編です。お楽しみくださいませ。

1.どうしてカーニバルに参加しようと思ったの?

もともと日本で浅草サンバカーニバルにバテリアとして出場したことがあって、それ以来、本場ブラジルのカーニバルにいつか参加してみたいとずっと思ってました。

2016年に仕事の関係で運良くブラジルに来ることができたたので、それで参加に踏み切りました。

2.Vai-Vaiを選んだ理由は?

強かったから、そして家から近かったからです。

やるからには勝ちたかったので、サンパウロのカーニバルで優勝回数が1番多い、強豪エスコーラのVai-Vaiは魅力的でした。

幸い当時住んでいた家がVai-Vaiの練習場所から徒歩10分だったので、通いやすさもあって、Vai-Vaiに決めました。

3.Vai-Vaiのバテリアにどうやって加入したの?

バカ丸出しですが、2016年12月にVai-Vaiの練習場に飛び込んで、バテリアの幹部らしき人に「Eu quero entrar(意訳:私も仲間に入りたい)」と言いました。

意外と話が通じて、入団テスト的なものをすぐに受けさせてもらえたのですが、指定されたVai-Vaiの叩き方をその場でうまく叩けなかったので、初日は輪に入れてもらえませんでした。でも、翌週に再テストのチャンスをもらえたので、一週間自主練して再テストに臨み、そこで無事に合格して仲間入りできました。

ちなみに、カイシャ(Caixa)というスネアドラムのような楽器を担当しましたが、その楽器パートには僕の後から入ってきた人はいなかったので、合流するタイミング的には相当遅かったと思います。本来は、カーニバルに向けて本格始動する8〜9月頃には遅くとも練習に参加すべきだと思います。

4.練習はどうだった?

12月以降、週2、3回のチーム練習がありましたが、練習はかなりキツかったです。

練習メニューの難易度や求められるスキル等、キツかった理由はいくつかありますが、最大の理由は、メストリ・タデウというバテリア総指揮者がとっても怖かったことです。今では笑い話ですが、当時は本当に震えるぐらいタデウが怖かったんですよ。彼の写真を見てもらえばわかると思いますが、顔つきがどう見ても堅気の人じゃないです(笑)。まあ、実際にはすごく良い人なんですけど。

タデウは終始バテリアを睨みつけながら指揮するタイプのメストリでした。演奏中にミスをするとタデウに「今ミスしたのオマエかコラ!出ていけボケェ!」と怒鳴りつけられてしまうので、バテリアは常に大きな緊張感に包まれてました。これは僕だけでなく周りもみんなそうでしたが、タデウに怒られないために、たとえ自分が目立つミスしても、あたかも自分のミスでないかのように振る舞うテクニックを自然と身につけていましたね(笑)。

5.参加して良かったことを教えて!

一つ挙げるとすれば、厳しいトレーニングの先にある喜びをバテリア仲間達と分かち合えたことでしょうか。

コミュニティの中には、社会人から学生まで、様々な立場の人が在籍していましたが、みんな良い奴らなんですよ。一番の仲良しのAndreは、無職の40歳で、バックボーンも価値観も自分とは全然違うのですが、サンバという共通語を介して、お互いに助け合ったりアドバイスし合ったりして、Vai-Vai在籍時はよく一緒にいましたね。Andreはじめ、バテリア仲間たちは同志という感じで、厳しいトレーニングを一緒に乗り越えたからこそ生まれる友情みたいなものがあって、それは参加しなければ得られなかったものだと思います。

あとは、ビジネスの場では知り得ない、ブラジルのくだけた挨拶や表現方法を学べたことも面白い経験になりましたね。

6.失敗談ってある?

本番1ヶ月前ぐらいにタデウによる一人一人の抜き打ちテストがあって、そのときに僕は緊張と二日酔いのせいでうまく演奏できず、「オマエはうまく叩けてないから本番には出るな」と言われました。

あのときは終わったと思いました。

私は恐怖に震える声で「Vai-Vaiのパレードに出たいんです。もっと練習しますから…」と食らいつきましたが、内心は「ああ、もう本番には出られないんだ…」と打ちひしがれてました。

その後、自主練に自主練を重ねて、最終的にはタデウから「ジャパ(日本人)もやるじゃねえか。みんなもこのジャパを見習え」と私の演奏とやる気を認めてもらえるようになり本番にも出させてもらえて結果オーライだったのですが、あの日タデウに戦力外通告された瞬間の絶望感は今でも忘れません。

7.本番はどうだった?

なんというか、少し呆気なかったというか、喧騒にまみれてワケがわからなかったというか、実感が湧く前に終わってしまった印象でした。

パレードは良い仕上がりだったので、ハマれば勝てるかもという一種の高揚感はずっとあったんですが、その高揚感を遥かに凌ぐほど疲れ果てていたというのもあったかもしれません。待ち時間が長すぎたんですよ。Vai-Vaiの出番が夜中3時頃なのに対して、その7時間前の20時には集合させられてましたから。

ちなみに、結果は3位でした。優勝まであと一歩、届きませんでした。もし勝っていたら、また違った記憶になっていたと思います。

実は個人的には、本番当日よりもエンサイオ・テキニコ(Ensaio Técnico)という本番の会場で行われるリハーサルの日の方が印象的でした。このリハーサルをわざわざ観に来てる物好きな観客もいて、そのマニアックなファンたちの声援が自分の心には響いたんですよね。あと、本番当日は慌ただしくて頭の整理が難しいので、それに対してエンサイオ・テキニコは自分たちのパフォーマンスに集中できる雰囲気があって、本場でサンバしてる実感を一番得られたのはそのときだったように思います。

8.日本とブラジルのエスコーラの違いは?

違いは色々あります。

まず、パフォーマンスや姿勢に対しては、ブラジルの方がよりシビアでしょうね。

バテリアのパフォーマンスは、ブラジルと日本では、大人と中学生ぐらいの違いがあると思います。自分の演奏力は日本では上位3割ぐらいに何とか入るぐらいのレベルだと思いますが、ブラジルだと中位以下です。

姿勢についてですが、Vai-Vaiでは“Dedicação”というワードが多用されていました。日本語でいうところの“献身性”です。Vai-Vaiのバテリアの一員としてやっていくには、チームに身を捧げる覚悟、フルコミットメントが必要だったのです。

一方で、ブラジルのエスコーラは段取りが悪すぎて、耐え難いことが何度もありました。とにかく謎の待ち時間が多すぎるんです。「今これ何の時間?」と何度思ったことか。

タライ回しにされるのもブラジルではあるあるです。衣装を受け取るために指定の時間と場所に行っても衣装を受け取れずリスケになり、2回目の衣装受け渡しも幹部のドタキャンでうまくいかず、3回目にしてようやく受け取れたのですが、やっと手にした衣装はXLサイズというデカすぎるサイズでした。(事前ヒアリングでは幹部にMサイズを希望してました。)

あと、楽器は持参ではなくチームのものを使うんですけど、エンサイオ・テキニコのときに幹部の手配ミスで楽器の数が足りなくて楽器なしでただ手ぶらで行進するハメになったバテリアメンバーが何名かいて、不憫でした。

その点、段取りや管理力は、日本の方が圧倒的に優れていると思います。

また、雰囲気については、日本のエスコーラの方がアットホームで優しい印象です。これは、日本のサンバ人口が少ないことも関係していると思います。Vai-Vaiのようなスパルタ式でやってしまっては余程のサンバ愛やコミュニティ愛、そして根性がないと人はついて来ませんから。日本のサンバ業界は、全体の傾向として、厳しさよりも楽しさを全面に押し出しているように感じます。

いろんな違いがありますが、簡単にいうと、ブラジルのサンバ=人生、日本のサンバ=趣味の延長、という考え方が一番しっくりくると思います。どちらも良さがあると思うので、この違いに優劣はないです。

9.今は?

仕事が忙しくなってしまったのもあって、カーニバル出場以来、練習にも行けていません。カーニバル時期にTVの前で応援だけはしています。

今年は上位リーグに戻ってこれて2年ぶりに優勝を目指せるチャンスだったのに残念です。

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如何でしたか?

カーニバルに自力で参加する方法や、本場ブラジルのサンバの練習、当日の様子、などなど、リアルな声を聞けてぴょんぴょ子自身も楽しかったです。

来年こそはこの事態も落ち着き、平和が戻り、カーニバルが開催されることを願うばかりですね。

Tchau tchau!

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